固体サンプルは様々な形態を採り、スピン系にはそれらに応じた様々に有効な緩和機構が存在する。このため簡単に固体NMRのスペクトルが得られたと言っても、そのスペクトルが何を意味するのかを完全に解釈するのは非常に難しいものである。
 つまり、何を目安に解析を進めていけば良いのかという一つの確立した方法論は固体NMRの場合は存在しないとさえ言える。サンプルに応じて臨機応変に取り組むことが要求されるわけである。固体NMRの難しさはまさにここにあるわけであるが、それでもこれから固体NMRで研究を始める研究者の何かの指針を提供できるよう努力していきたい。 
  固体NMRにおいては溶液NMRの場合と異なり、化学シフトの異方性が打ち消されずに存在し、スペクトルの形状に大きく影響する。また双極子相互作用も打ち消されずに存在し、スペクトルの線幅を広げる。MAS(Magic Angle sample Spinning)はこの両方の効果を打ち消す働きをする。双極子相互作用を打ち消すにはデッカプリングのほうがより効果的であるが、逆に化学シフトの異方性はデカップリングでは取り除くことはできない。固体高分解NMR法の様々な手法の中で最も広く普及している手法は、スピン1/2の希スピン系に対して、MASによって高分解能化する手法である。
 有機化合物の13C観測に関しては、この手法に加えて高出力1Hデカップリングを行うことと、CP法による感度増大を組み合わせ、いわゆるCP/MAS法と言う手法が確立された。最近になって1Hハイパワーデカップルの改良バージョンとして、始めてCWデカップル以上の効率を持つデカップリングシーケンスが提案され、その有効性が証明されている。固体状態では、双極子相互作用がそのまま存在しています。通常の有機化合物では、13C核と1H核との異種核双極子相互作用の大きさが10-40KHzに達します。固体状態で高分解能スペクトルを得るには、この相互作用の強さを上回るパワーで1H核をデカップリングしなければなりません。このため、固体高分解能NMRで使われる異種核デカップリングのことをハイパワー1Hデカップリング(High Power Proton Decoupling)と呼びます。固体NMRで使われるハイパワーデカップリングと言えばCW(Continus-Wave)デカップリングのことでした。最近、A.E.Bennet等によって、固体NMRにおいて、CWデカップリングを上回る効果を持つ単純で有効なデカッップルシーケンスが提唱されました。これは、2種類の位 相シフトしたパルスを繰り返すので、TPPM(Two Pulse Phase Modulation)デカップリングと言われています。このパルスシーケンスは、S/Nの向上や、分解能を上げるのに適しています。
 最近発表された華やかな多次元パルス列や、核間距離の測定のパルスシーケンスに組み入れることや、これまでの13C-CP/MAS法のスペクトルを改善する可能性のある実用性のあるシーケンスである。固体高分解能NMR法の様々な手法の中で最も広く普及している手法は、スピン1/2の希スピン系に対して(Magic Angle Sample Spinning)によって高分解能化する手法です。有機化合物の観測に関しては、この手法に加えて高出力1H デカップリングを行うことと、CP法による感度増大を組合わせ,いわゆる CP/MAS法という手法が確立されました。最近 1H ハイパワーデカップルの改良バージョンとして、始めてCWデカッル以上の効率を持つデカップリングシーケンスが提案され、その有用性が証明されています。


固体NMRを利用した研究例1
  (アコヤガイ真珠層の固体 13C NMR測定)
固体NMRを利用した研究例2
  (金属錯体による炭酸ガスの固定)
固体NMRを利用した研究例3
  (β-グルカンの(1,6)結合グルコ−ス/(1,3)結合グルコ-ス比の定量方法)
固体NMRを利用した研究例4
  (アンフォテシンBとエルゴステロールの相互作用
   ― 2H NMRによる解析 ― )
固体NMRを利用した研究例5
  (Orange and Yellow Crystals of Copper(I) Complexes Bearing
   8-(Diphenylphosphino)quinoline: A Pair of Distortion Isomers
   of an Intrinsic Tetrahedral Complex)
   




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