はじめに

X線は、1895年、ドイツ人レントゲンが発見したこの波は、20世紀の科学文明を準備する大発見の一つで、彼は第1回のノーベル賞を受賞して大変有名になりました。
X線は、エネルギーが強く、物を突き抜ける性質があります。現在ではこのX線のさまざまな性質が研究されいろいろな応用が開発されています。特に非破壊検 査という分野でその利用が進んでいます。非破壊検査は、ものをこわさずにものの性質や成分を検査することです。また、電子顕微鏡と組み合わせて大変小さな 物の分子などの成分を調べることもできます。

エックス線:電子線を金属に衝突させる際に発生する(波長の短い)電磁波で、発生原因は核外の電子にあります。

X線研究の年譜
1875 クルックス、放射計を考案
1876 ゴルトシュタイン、陰極線を発見
1880 クルックス、陰極線が電荷を帯びた粒子の流れであると確認
1895 レントゲン、X線を発見
1896 ベクレル、ウランの放射を発見
1898 キュリー夫妻、ラジウムを発見
1900 ノーベル財団設立
1901 レントゲン、ノーベル物理学賞を受賞
1912 ラウエ、X線の回折現象を発見
<X線結晶構造回折の始まり>
1914 ブラッグ父子、X線の波長を研究
1921 キュリー夫人『X線診断学と戦争』を出版
1930代 X線による非破壊検査の実用化
1952 ロザリンド・フランクリン、X線回折によるDNA構造の先駆的研究
1972 コンピュータX線断層診断装置(CATスキャン)の導入


X線分析とは
X線を利用した分析機器の多くは、X線のブラッグ回折を利用したものである。多くの物質は、きわめて小さな結晶(原子が規則正しく並んだもの)からできて おり、結晶内部では原子又はイオンが規則正しく配列して空間格子を形成している。空間格子では原子が互いに平行な面 郡上に規則正しく存在しており、下の図のような原子の配列を考える。これに波長λのX線をその面 とθの角度で入射させた場合、λ、θ及び面群の間隔dとの間に、

nλ=2dsinθ(Braggの回折条件) (n=1,2,3,・・・)
結晶格子面の間隔:d
X線の波長:λ
格子面への入射角度:θ

上の式を満足する条件が成立すればX線は互いに干渉して回折する。
散乱される角度は入射方向に対して2θとなります。波長λと回折角2θを測定するとこの関係から格子面 の間隔がわかります。結晶中の多くの格子面とそれからの回折強度,さらにそれらの間の角度から結晶内の各原子の配置を決めることが出来ます。これを結晶構造解析といいます。結晶によるX線回折を利用して、結晶の種類、大きさ又は面 間隔の変化などを求め、鉱物のような無機物、化合物の分析、生体を構成するタンパク質のような有機分子、熱処理に伴う残留応力の測定までこの方法は適用できます。


格子面によるX線の回折

単結晶X線構造解析装置

物 質の性質を明らかにするには、物質を構成している分子や原子の結合状態や分子そのものの立体構造の解明が必要です。本装置は、やっと目に見えるくらいの大 きさ(0.3mm角)の単結晶であれば、容易に1億倍以上に拡大したその物質の精密な構造を原子レベルで見せてくれます。

原理と本装置の特長

単色化した(すなわち、一定の波 長の)X線ビームを単結晶に照射し、いろんな方向に回折するX線の方向とその強度を精密に測定し、これらの測定データを解析して結晶構造を決定します。コ ンピュータおよび優れた各種のソフトウェアによる測定の自動化と測定データをもとに構造解析(X線の専門家でなくても)ができる優れた装置です。

回転軸を4つもつ「X線単結晶構造解析装置」では、結晶にあらゆる方向からX線を入射することになるので、多くのX線データを集めることが可能である。 また、ワイセンベルグ(Weissenberg)法を応用し、フィルムの代わりにイメージングプレート(IP)を用いた「X線回折装置」では、回折データを高い感度でしかも広面 積の検出器で記録するので、従来型の1/5から1/10の時間で測定が終了する。不安定な物質やX線で分解しやすい物質の構造解析に威力を発揮する。

X線回折計にCCD等の二次元検出器を利用することにより、より小さい結晶でも短時間で測定できます。

使用できる装置として


超分子結晶構造解析装置(VariMax RAPID II)
投稿用名称:(Rigaku MicroMax-007HF,VariMax-Mo and RAPID II)

【仕様】
リガク製
型式:回転対陰極方式
最大定格出力:1.2kW(50kV―24mA)
焦点サイズ:0.15X0.1 mm
X線輝度:31.0kW/mm2
ターゲット材料:Mo(モリブデン) X線光学系: ポイントフォーカス人工多層膜集光ミラー
ミラー長:150mm
カメラ長:127.4mm
IPサイズ:460 mm X256 mm
画素サイズ:100X100/200X200μm
読みとり時間:100sec,26sec
回折強度と読み取り方式:内周読み取り(光学系回転)方式
レーザー定格出力:半導体レーザー 30mW
消去時間:20sec
制御コンピュータ:PC
測定・データ処理ソフトウェア:RAPID AUTO
試料吹付低温装置(低温窒素ガス吹き付け型):(使用温度範囲は -180〜200℃)
構造解析コンピュータ:teXsan for UNIX


特徴
  • 低分子単結晶構造解析を主にした、高輝度X線源とVariMax(X線集光ミラー)、イメージングプレート検出器の組み合わせにより短時間でしかも微小結晶でも測定が可能です。
  • 大きな検出面積 460 mm X256 mm のイメージングプレート検出器
    格子定数が大きくても高分解能で測定可能。
  • 広いダイナミックレンジ 〜 1.05×10
    長時間の露光を必要とする測定にも威力を発揮。
  • 人工多層膜ミラーの採用
    X線反射率、集光性に優れ、輝度もアップし、単色X線を得ることが可能。結晶サイズが約φ0.3 mm〜微小結晶に至る測定が可能。
  • 高輝度X線源(31.0kW/mm2
    管球以下の出力(1.2kW)でも高輝度。





高輝度・高速X線構造解析装置
(High-brightness and high-speed X-ray structure analysis system)

メーカー(型式)
(株)リガク Rigaku R-AXIS7/FR-E

【仕様】
X線発生装置等:
Rigaku FR-E++ Super Bright(45kV 55mA 2.475kW)
回転対陰極(Mo)
X線源(Mo,タングステンフィラメント)
湾曲型人工多層膜ミラー Confocal Mirror 搭載 
Beem size at sample(0.21mm)
イメージングプレート型検出器等:
IP検出面積(300mm×300mm)
カメラ長(80mm〜280mm)測定範囲(64°/カメラ長70mmの時)
ダイナミックレンジ(1〜106)AU(アナログデジタルユニット/画素)
ゴニオメータ部等:1/4χゴニオ
試料吹付け低温装置(使用温度範囲-170〜200℃)
制御コンピュータ:PC
測定・データ処理ソフトウェア:RAPID AUTO
構造解析コンピュータ:teXsan for UNIX or CrystalStructure for PC

特徴
  • 結晶になったタンパク質の立体構造解析行うために、X線回折データを収集する装置。X線源(Mo)、検出器はIP(イメージングプレート)。





高輝度・X線構造解析装置(極微小結晶用)

メーカー(型式)
(株)リガク Rigaku RAPID/FR-E

【仕様】
X線発生装置等:
Rigaku FR-E++ Super Bright(45kV 55mA 2.475kW)
回転対陰極(Cu,Mo波長切り換えに対応)
X線源(Mo及びCuで二つの波長を切り換えて使用できる)
湾曲型人工多層膜ミラー Confocal Mirror搭載(Cu及びMoに対応)
Beem size at sample(0.21mm)
イメージングプレート型検出器等:
湾曲IP検出面積(750mm×382mm) カメラ長(191mm)測定範囲(165°)
ダイナミックレンジ(1〜106)AU(アナログデジタルユニット/画素)
ゴニオメータ部等:1/4χゴニオ
吹き付け低温装置(-170〜200℃)
制御コンピュータ:PC
測定・データ処理ソフトウェア:RAPID AUTO
構造解析コンピュータ:teXsan for UNIX or CrystalStructure for PC

特徴
  • X線源(Mo及びCuで二つの波長を切り換えて使用できる)
  • 現在は、X線源はCuが用いられており、有機低分子の絶対構造の解明が行えます。また、格子定数の大きな結晶にも適しています。検出器は湾曲IP(イメージングプレート)。




Copyright(C) Technical Support Division, Graduate School of Science, Osaka University