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質量分析法
質量分析法とは、高真空(1x10−5Pa位)中で、試料分子 をイオン化させ電場磁場などの作用を用いて、イオンの質量 差で分離する分析法です。

質量分析計  
装置はイオンを作るイオン化部、作ったイオンを分離分析する分析部、分離 されたイオンを検出する検出部、検出されたデータを解析処理するデータ解析装置の 4つに分けられます。

質量分析の歴史  
1912年Thomsonによって最初の質量分析装置が作られました。 1918年にはAstonは自作の質量分析装置を作り、ネオンの同位体の存在や自然界に存在する元素の精密質量 や同位体存在比を決定ました。さらにDempsterがフィラメントに塗布した試料を加熱しカリウムイオンの測定を行い、物理学の世界の装置であった質量 分析器が原子から分子へ、さらに物質の構造を調べるのに使われることになりました。 化学の分野では、電子イオン化法(EI)や化学イオン化法(CI)による低分子化合物の分析が中心でしたが、1969年Beckeyらにより電界脱離法(FD)が開発され、高分子化合物の分子量 分布や、1981年Berberらによる高速粒子衝撃法(FAB)が糖脂質の分析に用いられてきました。近年になって、エレクトロスプレー法(ESI)やレーザーイオン化法(MALDI)が普及し、高分子化合物・蛋白質・糖の測定が可能になりました。また最新の話題としては、生体内の生理活性作用を分子レベルで解明するために重要な役割を果 たしています。 化学科でも日立製作所の磁場型2重収束装置(RMU−7HR)によるEIにはじまり、日本電子のJMS−O1SGにおいてFD法により難揮発性の試料が測定可能となりました。JMS―SX102ではFABが、PE―SCIEX社のAPI― IIIPLASでイオンスプレー(IS)が、島津クレイトス社のMALDI―IVで MALDIが出来るようになりました。質量 分析室に導入された装置だけでなく、研究室にもGC-MS・イオントラップ・ ESI―TOFの装置が多数導入されています。 2003年2月に導入されたAXIMA-CFRは、田中耕一さんのノーベル賞で脚光を浴びた最新型の装置です。2006年10月にQSTARーEliteが導入されました。それに伴いAPI-IIIが廃止されました。2008年10月にJMS−SX102が廃止されました。

2009年4月現在講習を受けた方のみ利用できます。依頼分析は行っておりません。

理学部の質量分析装置

各自測定(ライセンス制)


QSTAR-Elite
(アプライドバイオ社製)四重極―TOF型 (平成16年購入)
イオン化モード
イオンスプレー法(IS)
測定範囲   20000まで
必要な試料量 1μmol/lの溶液を数ml程度 



AXIMA-CFR(島津製作所製)飛行時間型 (平成14年購入)
イオン化モード
マトリクス支援レーザー脱離法(MALDI)
測定範囲    300000まで

1.試料導入部
直接試料導入法とガスクロマトグラフィが主に用いられていたが、近年になってエレクトロスプレー法の急速な進歩によりシリンジポンプ、液体クロマトグラフィ、キャピラリー電気泳動などの装置が接続され利用されています。

2.イオン化部
電子イオン化法(EI)
加速された電子線を気体状の試料分子に照射して、イオンを生 成させる方法。
高速粒子衝撃法(FAB)
数KVに加速した中性Xe原子をマトリクスと混合した試料に衝突させるこ とでイオンを生成させる方法。マトリクスとしてはグリセロール(G)、m‐ニトロ ベンジルアルコール(NBA)などが用いられる。
電界脱離法(FD)
エミッター上に塗布した試料を電流をかけながら、カーボンウイスカー 先端近傍の高電界におけるトンネル現象を利用したイオン化方法。
エレクトロスプレー法(ESI)
試料溶液を供給するキャピラリーの先端で数KV の高電圧の印加によっ て、霧化させると帯電液滴が生成し、さらに加熱ガスを吹き付けることによりイオン の蒸発が起こる。さらにプロトン付加やプロトン脱離による多価イオンが生成するソ フトなイオン化法。
イオンスプレー法(IS)
ESIから派生した方法で、高電圧を印加した金属キャピラリーに試料溶液 を供給し、外側の二重円筒から噴霧用のガスを噴出させることで帯電液滴を生成させ イオンを取り出すイオン化法。
マトリックス支援レーザー脱離法(MALDI)
使用するレーザー光波長に吸収帯を持つマトリクスに試料を混合溶解さ せ固化させたものにレーザーを照射させイオン化させる方法。

3.質量分離
質量分離手段として、1990年代初めまでは磁場・電場が中心でしたが、最近 ではイオントラップ・飛行時間・イオンサイクロトロン共鳴などが実用化されて、多 様な装置が増えてきています。

4.イオン検出
磁場の先端にガラス乾板をおいて測定することから始まり、現在は二次電子 増倍管とチャンネルトロンが主な検出部分です。




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